• TOP
  • 宗教法人の税金
  • 宗教法人の固定資産税は非課税!?新しく土地を買った場合どうなる?

宗教法人の固定資産税は非課税!?新しく土地を買った場合どうなる?

1.宗教法人の固定資産税の取り扱い

『宗教法人は税金がかからない』と誤解されている方が多いですが、何もかもが税金がかからないというわけではありません。

例えば、法人税については、宗教活動部分は法人税がかからないけれど、収益事業部分は法人税がかかります。

(詳しくは、『宗教法人は非課税は本当?宗教法人の税金を簡単解説』を参照)

固定資産税も基本的な考え方は同様で、宗教活動部分については非課税として、収益事業部分は課税するという形です。

 

詳しく書くと次のような形になります。

宗教法人が所有している土地・家屋等は固定資産税がかかることとなっていますが、

①宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地、②墓地、この2つについては、固定資産が課せられないこととなっています。

たとえ、形式上境内地であっても上記の2つの内容で使用していなければ、固定資産税がかかるということになります。

 

ちなみに、宗教法人の固定資産税非課税の由来はご存じでしょうか?

古くは年貢の時代にさかのぼりますが、この時代は物納で米を納めていました。

寺社は年貢が免除されていて、明治時代の地租改正で年貢から地租に変わった時も寺社は、引き続き地租が免除されていました。

やがて戦後にアメリカによるシャウプ勧告があり、現代の税制の基礎となる税制改正がありました。

この際に地租は固定資産税に姿を変えました。固定資産税は地租の寺社に対して地租を課さないという流れを汲んで、引き続き、寺社に対して固定資産税を課さないという形になりました。

 

2.新しく土地を買った場合はどうなる!?

宗教法人の土地に固定資産税がかからないのは、その土地が①宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地、②墓地のどちらかに該当する場合です。

この場合以外は、固定資産税がかかります。

では、新しく土地を買った場合でこの要件を満たす場合、どうすれば非課税になるのでしょうか?流れは以下の通りとなります。

STEP1 都道府県知事に境内地境内建物証明願を提出

STEP2 都道府県知事から非課税証明書の交付を受ける

STEP3 都道府県税事務所又は市町村に固定資産税非課税証明書を提出

STEP4 STEP3の提出を受けた都道府県税事務所又は市町村が現地の現況や利用状況を調査

STEP5 非課税の認定を受ける

この手順を経て、新しく買った土地が非課税となります。

非課税の認定を受けることができなければ、その土地は課税されます。

 

3.非課税の要件『宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地』とは?

宗教法人の土地・家屋は、①宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地、②墓地に該当する限り非課税というのは、前述の通りです。では『宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地』というのはどのようなことをいうのでしょうか?

分解して考えてみましょう!

 

『宗教法人』

→法人格を持った宗教団体のこと

 

『専らその本来の用に供する』

→宗教法人法第2条に宗教の教義をひろめ、儀式行事行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする団体が宗教法人と書かれています。

これが宗教法人の『本来の用』ということになります。

最初に『専ら』とついていますので、その土地・家屋の『ほとんど』が宗教の教義をひろめ、儀式行事行い、及び信者を教化育成することを主たる目的に使われていることが必要です。

 

『境内建物及び境内地』

→宗教法人法3条の内容によると、宗教の教義を広め信者を教化育成するために必要な建物のことを境内建物といいます。

例えば、本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院などをいいます。

境内地とは、宗教の教義を広め信者を教化育成するために必要な宗教法人固有の土地のことです。

例えば、本殿や本堂が建っている土地、参道、儀式を行うのに必要な神せん田、尊厳を保持するための庭園や山林、歴史や古記等によって密接な縁故がある土地などをいいます。

 

まとめると、非課税となるには、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成するということが必要だということです。

 

4.非課税とならなかった事例

  • 他人から境内地を借りていた事例

→宗教法人が誰か他人から土地を借りて境内地として使っている場合は、その土地が宗教活動の用に使われていても、その土地の所有者に固定資産税が課されます。

 

  • 機械搬送式納骨堂の事例(平成28年5月24日東京地裁)

→宗旨、宗派、宗教を問わない機械搬送式納骨堂が境内建物にあたらないとして、固定資産税が課された。

判決の分かれ道になったのは、『専ら本来の用に供す』の部分です。専ら本来の用に供すとは、宗教の教義を広め信者を教化育成する宗教活動の本義を追及するものをいうのであって、外観的に宗教の儀式行事を行うだけでは、本来の用に供するとは言えないとされました。

この判決からわかるのは、外観や形式上その用使っている風に見えても宗教法人の本来の目的がないものはダメだということです。

実質や実態で判断されるということが明らかになった判決でした。

 

5.まとめ

宗教法人の固定資産税について見てきましたが、その土地や建物の固定資産税が全て非課税になるということはありません。

宗教法人だから、新しく土地を買っても非課税という安易な判断はおすすめできません。

特に、非課税となる要件の『宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地』は裁判になるほど判断が難しい内容です。

宗教法人で土地を購入する際は、購入する前に専門家に相談するのが得策でしょう。

税金や終活のお悩みを
解決いたします!

「法人税の申告書の作成方法が分からない!」
「宗教法人の税金・会計について専門家にサポートしてほしい!」
「終活を考えているが何から始めたらよいのか分からない!」
「相続について一緒に考えてくれるパートナーが欲しい!」
といったお悩みのある方は、まずは一度ご相談ください。

宗教法人の税金・会計業務、クラウド会計導入などお坊さん税理士が親身になってサポートいたします。
相続や終活のお悩みもお任せください!