宗教法人は非課税?は本当?宗教法人の税金を簡単解説

1.宗教法人は非課税?

宗教法人は非課税と考えている人が多いのではないでしょうか?

インターネットで検索すると宗教法人非課税といったワードが飛び交っていることから誤解をされている方が多いのですが、法人税は利益に対して課税するという考え方がありますので、収益事業を行い、所得が生じれば、法人税が課税され、法人税を納付することとなります。宗教活動については非課税となっているのですが、これは、法人税法上、宗教法人は公益法人というカテゴリーに分類されているからです。

公益法人は、もっぱら公益を目的として設立され、営利を目的としない公益性の高い法人とされています。つまり、国が賄いきれない、公共サービスや公益的活動をこの公益法人が代わりにしてくれているという考え方なんですね。この公益性の高さから宗教活動については非課税とされているといえるでしょう。収益事業に課税されるというのは、民間企業との公平性を担保するためと言えます。

では、宗教法人が法人税を課税される収益事業とはどういうものでしょうか?次の章で見てみましょう。

 

2.法人税における収益事業

宗教法人が行う収益事業に対しては法人税が課税されます。民間企業との公平性を保つためと上で書きました。これは、株式会社などの営利法人と同じ事業をした場合、一方は課税されず、一方は課税されると価格決定等で競争の原理が働かなくなり、公平性が損なわれる恐れがあるためです。

それでは、ここで言う収益事業とは何かを見てみましょう。

  1. 物品販売業
  2. 不動産販売業
  3. 金銭貸付業
  4. 物品貸付業
  5. 不動産貸付業
  6. 製造業
  7. 通信業・放送業
  8. 運送業・運送取扱業
  9. 倉庫業
  10. 請負業(事務処理の委託を受ける業を含みます)
  11. 印刷業
  12. 出版業
  13. 写真業
  14. 席貸業
  15. 旅館業
  16. 料理店業その他の飲食店業
  17. 周旋業
  18. 代理業
  19. 仲立業
  20. 問屋業
  21. 鉱業
  22. 土石採取業
  23. 浴場業
  24. 理容業
  25. 美容業
  26. 興行業
  27. 遊技所業
  28. 遊覧所業
  29. 医療保健業
  30. 技芸教授業
  31. 駐車場業
  32. 信用保証業
  33. 無体財産権の提供業
  34. 労働者派遣業

これら34種類が収益事業として定められています。収益事業から生じた所得に対して法人税が課税されます。

継続的に事業場を設けて行われるものが対象となります。

また、収益事業34種類だけでなく、事業活動の一環として又はこれに関連して行われる付随行為も収益事業に含まれることとなりますのでご注意ください。

以下で収益事業となるかどうかの具体的判断の一例をみて行きましょう。

 

お守り、おみくじ等の販売

お守り、おみくじ、お札などの販売をしている宗教法人は多いと思います。

こちらは、売価と仕入原価との関係に着目し、通常の物品販売業の売買利潤ではなく、実質的には喜捨金(お布施のような考え方)と認められる場合には、収益事業に該当しません。しかし、一般の物品販売業者においても販売されているような物品(絵葉書、写真帳、暦、線香、ろうそく、数珠、朱印帳帳など)を通常の販売価格で販売する場合には、収益事業に該当します。

 

墳墓地等の不動産の貸し付け

宗教法人が行う墳墓地の貸し付けは収益事業には該当しません。永代使用料として受け取るものや、使用期間を定めて、継続的に地代を徴収するものも収益事業には該当しません。

墳墓地以外の不動産の貸し付けで、一定のもの以外は、収益事業に該当しますので、ご注意ください。

 

駐車場の経営

宗教法人が境内の一部を時間極めなどで不特定多数の者に随時駐車させたり、月極め等で一定期間同一の人に駐車場所を提供する行為は収益事業に該当します。

 

境内地の席貸し

宗教法人の境内地や本堂、講堂等の施設を不特定多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に使用するための席貸しは収益事業に該当します。これらの用途以外の貸し付けも、一定の場合を除き、収益事業に該当します。

 

宿泊施設の経営

宗教法人が所有する宿泊施設に信者や参詣人を宿泊させて、宿泊料を受ける場合、いかなる名目であっても収益事業に該当します。

しかし、宗教活動の延長線にあり、簡易な共同宿泊施設で、その宿泊料の額がすべての利用者につき1泊1,000円(食事を提供するものについては2食付きで1,500円)以下となっているものの経営は、収益事業には該当しません。

 

所蔵品等の展示

宗教法人が所蔵している物品又は保管の委託を受けたものを常設の宝物館等で観覧させる行為は収益事業には該当しません。

 

茶道、生け花等の教授

宗教法人が茶道教室、生け花教室等を開き、茶道や生け花等の特定の技芸を教授する事業は収益事業に該当します。特定の技芸は多岐にわたりますが、洋裁、和裁、着付け、手芸、料理、理美容、書道、音楽等があります。通信教育で行うものも収益事業に該当します。免許、卒業資格、段位、級など一定の資格称号等だけを付与するものも含まれます。

 

結婚式場の経営

宗教法人が神前結婚式、仏前結婚式挙式を本来の宗教活動の一部として行われるものは、収益事業に該当しませんが、挙式後の披露宴の席貸し、飲食物の提供、記念写真の撮影、これらのあっせん行為は収益事業に該当します。

 

3.消費税

宗教法人も消費税及び地方消費税の納税義務があります。葬儀法要等の収入は、消費税の課税の対象となっていないことから、消費税の納税義務があるという感覚は薄いかもしれません。しかし、墓地・霊園の管理料や絵葉書・写真帳などの販売は消費税の課税対象となっており、免税事業者(基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1000万円以下)に該当する場合を除き、消費税の納税義務者となります。

逆にいうと、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は、その他一定の要件はありますが、消費税の納税義務者となりません。

消費税の課税対象となる取引は、法人税の収益事業とは別の考え方となるので注意が必要です。消費税では、原則として事業として行われる行為が対価性のある資産の譲渡にあたるかどうかで課税対象かどうかを判断します。ここで課税対象となると判断されたものであっても、消費の性質になじまないものや社会政策的な配慮から非課税となっているものもあります。

例えば次のようなものが消費税の課税対象となります。

  • 絵葉書、写真帳等の販売
  • 墓地、霊園の管理料
  • 駐車場の経営
  • 神前、佛前結婚式にあたり、挙式後の披露宴における飲食物の提供
  • 神前、佛前結婚式にあたり、挙式のための衣装その他の物品の貸し付け
  • 幼稚園の経営にあたり、制服制帽等を販売
  • 新聞、雑誌、法話集、経典の出版、販売

 

まとめ

宗教法人は、非課税なのかという点について記載してきました。

結論は、宗教法人が収益事業を行う場合は、法人税が課税され、消費税の課税対象となる取引を行う場合は消費税が課税されます。

収益事業を行う場合、税務署への届出が必要であったり、法人税の申告が必要です。

また、申告を行うにあたり、収益事業の経理と収益事業以外の経理を明確に区分する必要があります。記帳の方法も宗教活動の収入の記帳の仕方と異なります。

消費税の申告も少し特殊なものになります。

宗教法人が公益のためになると思い始めたものが、申告が必要な収益事業になるということもあるでしょう。

「これ収益事業にあたるのかな?」と思われましたら、宗教法人に強い税理士に相談されることをおすすめします。

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