宗教法人も給与の所得税を天引する!?源泉徴収制度の概要を簡単解説!

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 会社が会社員に給料を支払う際と同様に、宗教法人も住職やその家族に給料を支払う際に、所得税を天引きする必要があることをご存じでしょうか?そもそも源泉徴収とは何なのか?今回は源泉徴収について簡単解説していきます。

源泉徴収制度

 所得税の確定申告というキーワードは、だれもが聞いたことがあるのではないでしょうか?しかし、源泉徴収制度はあまり聞きなれないかと思います。本来、所得税は、所得者自身が所得と税金を計算して、その税金を支払う申告納税制度が採用されているところですが、特定の所得については、税金を徴収することが困難であるとか、能率的かつ確実に税金を徴収するためであるとか税金の確保に資するという理由で、申告納税制度にかえて採用されている方法があります。この方法が、源泉徴収の制度です。源泉徴収制度は、納税義務者(例えば、給与の支払を受けた人)以外の第三者(例えば、給与の支払者)が税金を天引きして国に納付する制度です。

 源泉徴収の対象となる所得の代表的なものは、給与、利子、配当などです。この源泉徴収制度は、諸外国でも採用されていて、日本では、利子所得は明治32年から、給与所得は昭和15年から採用されています。

 源泉徴収の制度の中で、源泉所得税や復興特別所得税を徴収して国に納める義務がある人を『源泉徴収義務者』といいます。源泉徴収義務者となる人は、源泉徴収の対象となる所得を支払う人すべてです。なので、会社はもちろん、協同組合や学校、官公庁でさえ源泉徴収義務者となります。

 したがって、宗教法人も住職や職員に給与を支払う場合は、源泉徴収義務者になり、源泉所得税を天引きして国に納付する必要があります。

 源泉徴収した源泉所得税は、原則、給与等を支払った月の翌月10日までが納付の期限となります。

源泉徴収の対象となる所得

 宗教法人との関係で、源泉徴収の対象となるものおおよそ次の3つかなと思います。①給与②退職金③報酬・料金等の3つです。②については、そんなに取り扱うことは多くはありませんが、源泉徴収の対象となりますので、頭の片隅においておかれるとよいかと思います。③の報酬・料金等というのは、講演料や弁護士報酬、税理士報酬、司法書士報酬などのことです。この報酬・料金等の税率は、100万円以下の場合は、10.21%で、100万円を超える場合、100万円を超える部分については、20.42%となっています。

 それでは、メインの①給与の説明に移りましょう。一般に『給与』というと毎月給料日に会社ないし勤め先からもらうお金のことと思われている方が多いかと思います。しかし、源泉徴収の対象となる『給与』というと一般の感覚と少し違います。ここでいう『給与』とは、給料、賃金、賞与、その他実質的にこれらの性質を有するものとされています。月給の形で支払われようと日当の形で支払われようと『給与』にあたり、手当や謝礼等の名目で支払われたものであってもこれが実質的に労働の対価であるときは『給与』に含まれることになります。また、現金で支払われるものに限らず、物で支給されたもの、住居を無償で提供した場合なども『給与』に含まれることになります。源泉徴収の対象となる『給与』の範囲は一般の感覚と比べて広く、経済的利益もその範囲に含まれます。経済的利益については詳細が事細かく決められていますが、また別の回で書けたらと思います。

 ここでよく質問を受ける事例を一つ紹介しておきましょう。

 特定の儀式の際に手伝いに来てくれた近隣のご寺院さんに対する謝誼や薄謝は源泉徴収しないといけないのでしょうか?

 →源泉徴収の必要はありません。謝誼や薄謝は相手方の宗教法人に対して支払われるものであり、支払を受けた宗教法人の収入となるべき性質のものです。ただし、これが個人に対して支払われる性質のものであれば源泉徴収の必要があります。

源泉徴収の方法

 次に具体的に源泉徴収の方法を見ていきましょう。

 準備するものは、給料台帳、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、源泉徴収簿、源泉徴収税額表です。給料台帳はどのような形式のものでも構いません。もし、どのようなものがいいのかわからないということでしたら弊事務所までご相談ください。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、源泉徴収簿、源泉徴収税額表のいずれも年末調整の時期(大体11月あたり)に税務署から分厚い封筒で送られてきます。手元にないという方は最寄りの税務署でももちろん手に入ります。また、国税庁のホームページからでも入手することができます。それぞれリンクを貼っておきますのでご参照ください。(扶養控除等(異動)申告書源泉徴収簿平成31年度源泉徴収税額表

 さて、それでは例を使ってどのように処理を行うのか見ていきましょう。

例:大阪太郎さんの場合

 前提条件

 給料の金額(月額) 416,000円

 給料から天引きする社会保険料等の金額 59,058円

 給与所得者の扶養控除等申告書の提出あり(源泉控除対象配偶者あり、控除対象扶養親族1人)

 兼業なし

 ここでまず、「扶養控除等申告書って何!?」という話になるかと思います。扶養控除等申告書とは、給与の支払いを受ける人が提出しないといけない税務上の書類のことです。この書類は、その年の最初の給料が支払われる時までに勤務先に提出するということになっています。この申告書を提出しないと、各種控除(例えば扶養控除)が受けられないので、毎月の給料から引かれる源泉所得税が多く徴収されることとなります。また、この申告書を提出しないと後に出てくる源泉徴収税額表の乙欄適用となってしまうので、これもまた源泉所得税が多く徴収されることとなります。さらにこの申告書を提出しないと年末調整が行われませんので、注意が必要です。ただし、この申告書は2か所には出せないのです。2か所で給与をもらっている人は、どちらか一方を選択して提出することになります。

 以上の記載例のように、ご自身に関する基本情報を書きます。そんな難しいことはありませんので心配しなくてよいかと思います。

 次に源泉徴収簿の書き方を見ていきましょう。

 これは完成形ですが、手順としては①甲欄、乙欄のいずれかに〇をつける。②住所と氏名、生年月日を書く。③給与の支払日を書く。④給料台帳から総支給金額を書く。⑤社会保険料等の控除額を書く。⑥社会保険料等控除後の給与等の金額欄に④で書いた総支給金額から⑤で書いた社会保険料等の控除額を引いた金額を書く。⑦扶養親族の数を書く。(今回は、源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族1人で2人)⑧源泉徴収税額表で該当箇所を探す。⑨算出税額欄に源泉所得税の金額を書く。⑩年末調整の過不足金額があれば書く。⑪差引徴収税額欄にその月の源泉徴収した金額を書く。(基本的には⑨の算出税額と同じ金額となります。)

 ①については、先ほども書いたように扶養控除等申告書の提出のあるなしなどで判断いただいてどちらかに〇をします。今回の場合は、甲欄となるので甲欄に〇をつけています。②、③、④についてはそのままなので今回説明を省略させてもらいますが、⑤の社会保険料については、少し説明がいるかと思います。ここでいう社会保険料等とは『健康保険』『厚生年金』『労災保険』『雇用保険』の4つを指します。ですので、『健康保険』と『厚生年金』だけ足したものではなく、『労災保険』と『雇用保険』も足したものを社会保険料等の控除額欄に書くことに注意が必要です。⑥と⑦の説明は、今回説明を省略させてもらって、⑧の説明に移りたいと思います。⑧の源泉徴収税額表で該当箇所を探します。

このように表で金額を探すだけなので、慣れれば簡単です。ここで探した金額を⑨算出税額欄に書きます。⑩の年末調整の説明はまた違う回で書きたいと思いますので今回は説明を省略させていただきたいと思います。

以上が源泉徴収の事務の方法です。源泉徴収制度の概要を解説してきました。どうでしたでしょうか?最初は難しく感じるかもしれませんが、この記事を参考に挑戦していただければ幸いです。

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